東日本大震災を上回る規模の巨大地震が、30年以内に70%の確率で発生すると予測されています。主に4例の地震が想定されており、いずれも被害が広範囲に渡ると見られています。
この記事では、想定されている巨大地震の規模や被害の範囲などについて、過去の事例も交えながら詳しく解説します。
Contents
発生が想定されている大規模地震4例

そう遠くない時期に発生すると予想されている大地震は、主に下記の4例です。
- 南海トラフ地震
- 首都直下型地震
- 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震
- 中部圏・近畿圏直下地震
①南海トラフ地震(発生確率:30年以内に70%)
「南海トラフ地震」は、静岡の駿河湾から九州南側の海域にわたり、広範囲で発生する地震の総称です。
東日本大震災を遥かに超える規模の地震になると想定されています。
※発生確率は2020年1月24日時点の数値です。


※各発生予想確率は、地震調査研究推進本部の資料に基づいています。
②首都直下型地震(発生確率:30年以内に70%)
南関東地域のいずれかを震源として発生する、大規模な直下型(都市の真下で起こる)地震です。
こちらも、東日本大震災を遥かに超える規模の地震になると想定されています。
※発生確率は2020年1月24日時点の数値です。


③日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震(発生確率:30年以内に60%)
房総半島東方沖から三陸海岸の東方沖(日本海溝)を経て、北海道十勝沖から択捉島東方沖(千島海溝)における地殻の境界等を震源として、発生する地震です。
※発生確率は2017年1月1日時点の数値です。

出典:内閣府 日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデルの検討について

④中部圏・近畿圏直下地震
中部圏や近畿圏には多くの文化遺産が集中しているため、直下地震によって重要文化財や老朽木造市街地への被害が危惧されています。

出典:内閣府 中部圏、近畿圏直下の地震の震度分布の公表について

想定されていない地域も要注意
2016年の熊本地震は、30年以内の大規模地震発生確率が1%未満の地域で発生しました。全国には約2,000の活断層が存在していますが、まだ見つかっていないものもあると指摘されています。
そのため、いつどこで大地震に襲われてもおかしくありません。想定されている地域以外でも、日頃から大地震に備えておくことが重要です。
次に、発生確率が特に高い「南海トラフ地震」と「首都直下型地震」について、想定される被害を詳しく解説します。
「南海トラフ地震」の事例と想定される被害

地震対策検討ワーキンググループの調査によると「南海トラフ巨大地震」と「首都直下型地震」のいずれも、東日本大震災を大きく上回る被害が想定されています。
まずは、南海トラフ地震の事例や想定される被害を見ていきましょう。
過去の事例
「南海トラフ」と呼ばれる区域では、100~150年周期で巨大地震が繰り返し発生しているのが特徴です。

南海トラフ地震の事例を見ると、下記のように経過や状況が実にさまざまです。
- 静岡から四国沖の広範囲で同時に発生
- 離れた複数の領域で同時に発生
- 時間差で2回発生
- 揺れは小さいものの、大規模の津波が発生
1854年には東海を震源として地震が発生(安政東海地震)し、その約32時間後に紀伊半島~四国南方沖を震源とする地震(安政南海地震)が発生しました。
直近の南海トラフ地震は、1946年に起きた「昭和南海地震」です。
徳島市や高知市で震度5を観測し、死者・行方不明者数は1,440人に達しました。また、徳島県や高知県沿岸で4~6メートルの津波が発生し、甚大な被害を及ぼしました。

想定される被害
静岡県から宮崎県にかけて、一部の地域で震度7を観測する可能性があります。またその周辺地域でも、震度6強~6弱の強い揺れが広い範囲で発生。
さらには、関東地方から九州地方までの太平洋沿岸で、最大30メートルの大津波が襲来すると想定されています。

出典:内閣府 南海トラフ巨大地震の被害想定について(建物被害・人的被害)
被災者数は6,000万人に及ぶと想定されており、南海トラフ地震では日本国民の半数が被災することになります。
地域ごとの建物等被害・人的被害の想定は下記の通りです。(発生時刻や風速等の条件により異なる)

参考:内閣府 南海トラフ巨大地震の被害想定について(建物被害・人的被害)
南海トラフ地震は広範囲での発生が想定されるため、死者や経済損失などの被害は東日本大震災の10倍以上になるとも言われています。
2019年、政府は南海トラフ地震による死者の想定について、当初の「約32万人」から「約23万人」へと下方修正しました。この理由は、国民の避難意識(特に津波)が向上したからとされています。
ただし、避難意識を向上させた人が実際にどの程度増えているのかは、定かではありません。
富士山の噴火も引き起こす?
火山の噴火は、大地震の影響により発生するケースがあります。
1707年に南海トラフで「宝永地震」が起きた際、その49日後に富士山の噴火を引き起こしました。想定される巨大地震の中でも、南海トラフ地震は特に富士山噴火と関連性が高いと言えます。
「首都直下型地震」の事例と想定される被害

首都直下型地震は「東京を震源とした大地震」ととらえている方もいますが、実際は「東京・千葉・埼玉・茨城・神奈川・山梨」を含む、南関東地域のいずれかを震源とした地震を指します。
過去の事例
南関東では、マグニチュード8クラスの大地震が200~400年間隔で発生しています。
また、マグニチュード8クラスの地震が起きる前に、マグニチュード7クラスの地震が複数発生している点も特徴です。

1923年の大正関東地震は、神奈川県西部を震源として、東京・埼玉・千葉・神奈川・山梨で震度6を観測。 その結果「関東大震災」と呼ばれる甚大な被害をもたらしました。
この地震は昼食の時間帯に起きたため、各地で火災が多発し被害の拡大につながりました。また、津波や土砂災害なども相次ぎ、死者・行方不明者は10万5千人以上にのぼっています。

想定される被害
関東エリア真下には活断層地域や隠れた断層がいくつもあり、そのいずれかが動くとマグニチュード7クラスの首都直下型地震が発生します。
日本の中でも、南関東は地震の頻度が高い地域とされています。そのため、人口や機能が集中する首都圏において、災害対策が非常に重要視されています。

出典:内閣府 特集 首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)
シーン別の想定被害は下記の通りです。

首都直下型地震による避難者は最大約700万人、帰宅困難者は約650万人(うち東京都は約390万人)とされています。
そのほか、首都圏ならではの下記のような被害も想定されます。
- 長周期地振動(周期が長い大きな揺れ)による超高層ビルの被災
- 余震の発生、大量の降雨による二次災害
- 道路・街路の閉塞による消火活動や避難活動の妨げ
- 鉄道での対向列車との衝突事故
- 火災発生やデマ等をきっかけに起きる、集客施設でのパニック
- 繁華街等での治安悪化
- 金利・株価等の変動によって経済活動が悪化
日頃からの備えが命を守る
国は災害へのあらゆる対策を施していますが、巨大地震が起きたら支援が受けられるとは限りません。自分の命を守るためには、日頃から災害への備えを万全にしておくことが重要です。
2023年2月時点では、東日本大震災の影響により、首都直下型地震のリスクが高まっているという説もあります。いつ発生するか分からない巨大地震に備え、この機会に備蓄などを改めて見直してみてはいかがでしょうか。
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