過去の大地震では、家具の転倒や落下による被害が頻発しています。また、耐震性に優れた住居であっても、家具によって負傷するリスクは避けられません。
地震の揺れから身を守るためには、家具をしっかり固定し安全性を高めることが重要です。
この記事では、地震による家具の転倒・落下・移動に関する防止対策について、基礎知識から具体的な方法まで詳しく解説します。
Contents
家具転倒防止対策の重要性

普段生活していて、家具が倒れてくる可能性を意識していない方も多いのではないでしょうか?
地震発生時に家具がどれほど危険なものであるか、ここでご確認ください。
地震では家具が多くの負傷を引き起こす
近年発生した地震では、約30~50%の人が家具の転倒・落下・移動により、下敷きになるなど負傷しています。

出典:新宿区公式ホームページ 家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック
また家具の転倒により、火災や避難経路遮断などの二次被害を引き起こす恐れも。
大地震において家具は必ず倒れるものと認識し、対策を実施することが重要です。
寝室を最優先で対策しよう
就寝中は突然の地震に対し無防備になるため、寝室の家具転倒防止対策を最優先で行ってください。また、ダイニング・キッチン・子供部屋など、滞在の頻度が多い場所も要注意です。
大掃除や引っ越しなどのタイミングで家族それぞれの寝室をチェックしたり、家具のレイアウトを見直したりするといいでしょう。
今回の地震では、もちろん構造自体もそうだったんだけど、まず家財道具の転倒がものすごかったんです。ですから、そういうのをあらかじめ、やはり転倒防止、たとえば食器棚やタンスとか、ほんのちょっと、わずかなことなんだけど、それをしておけばまだ被害が軽かったなというのが、災害後にまず実感したこと。
引用:内閣府 もし、一日前に戻れたら・・・『一日前プロジェクト』エピソード集
家具転倒防止対策の基本

家具転倒防止対策は「配置の工夫」「固定器具の活用」が基本です。お住まいの環境に合わせて対策するために、基礎知識を押さえておきましょう。
家具の配置を工夫する
安全な空間を確保するため、下記項目を参考に家具の配置を工夫しましょう。
家具の設置を避けたい場所
- 出入口付近・廊下・階段等、避難の妨げになる場所
- 火気付近(地震発生時の出火を防止するため)
- 寝室・子供部屋・座る場所・高齢者がいる部屋
家具設置時の注意点
- ガラス製品等、落下すると危険なものを家具の上に置かない。
- 就寝位置は家具の脇か、家具の高さ分だけ離れた場所にする。
- 家具を倒れにくくするため、重いものは下の方へ収納し重心を低くする。

出典:東京消防庁 家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック
家具の置き方が悪かったために、地震発生時に危険な状況へと陥った例も。
私が寝ていた場所というのは、頭のほうにテレビが置いてあって、足元には冷蔵庫が置いてありました。やっと揺れがおさまって、振り返って自分の部屋の中を見たら、テレビと冷蔵庫が自分の寝ていた場所にドン、ドンと転がっていたのです。それを見て、「逃げてよかったな」と思うと同時に、「そんなところで寝ていちゃいけないな」と思いました。
引用:もし、一日前に戻れたら・・・『一日前プロジェクト』エピソード集
固定器具の基礎知識
家具や家電製品の転倒・落下・移動の防止対策として、下記のような固定器具が便利です。
これらの器具を活用すれば、地震が起きたときの被害を大幅に軽減できます。
固定器具の種類
- L型金具(上向き・下向き)
- プレート式
- ベルト式
- チェーン式
- ワイヤー式
- ポール式(突っ張り棒式)
- ストッパー式
- マット式

出典:東京消防庁 家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック
L型金具

出典:東京消防庁 家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック
ネジやボルトでL型金具を取り付け、家具と壁を固定する方法です。固定器具の中では最も効果が高い基本の対策と言えます。
ちゃんと地震が来るとわかっていたら、いろんなものを留めていたと思うんですけれども、それをやっていなかったものだから、やっぱりみんな倒れてしまったわけです。ただ、茶の間の大きな食器棚だけは、L字金具を買ってきて何カ所か留めていたので、倒れませんでした。やっててよかったなと思いました。
引用:内閣府 もし、一日前に戻れたら・・・『一日前プロジェクト』エピソード集
壁に固定する際には、壁の下地材である間柱などに取り付ける必要があります。下地探知センサーを使えば、壁を傷付けずに下地材を確認できます。
プレート式・ベルト式・チェーン式・ワイヤー式

出典:東京消防庁 家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック
家具と壁を金具2か所でネジ止めし、金属プレート・ベルト・チェーン・ワイヤーなどで連結したタイプです。扱いに不慣れでも位置を調整しやすいのが特徴です。
ポール式(突っ張り棒式)

出典:東京消防庁 家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック
家具と天井の間に伸縮棒を置き、天井を押す力により転倒を防止します。
壁や柱へのネジ止めができないときにも使われる方法ですが、家具の形状・強度や環境によっては設置が難しい場合も。
ストッパー式・マット式

出典:東京消防庁 家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック
家具と床の間に、くさび状器具(ストッパー式)や粘着性ゲル状器具(マット式)を挟み込みます。
安価で入手しやすいものの、耐震効果はそれほど高くありません。ただし、ポール式と併用すれば大きな効果を発揮します。
家具を固定する方法の例

家具によって使用する固定器具は異なり、また移動防止対策が必要なものもあります。ここでは、家具の固定方法を種類ごとに解説します。
タンス
タンス上の奥側(壁側)で、かつ天井や家具の硬い部分にポール式器具を取り付ける。床もストッパー器具などで固定する。

出典:東京消防庁 家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック
本棚
L字型金具やポール式器具などで固定する。本の落下防止対策として、落下抑制テープ・ワイヤー・紐などを使う。重い本は下の段に置き重心を低くし、倒れにくくする。

出典:東京消防庁 家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック
食器棚
L字型金具やワイヤーなどで壁に固定し、観音扉(開き戸)には留め具を付ける。食器やガラスが飛散しないよう、ガラスに防止フィルムを貼る。

出典:東京消防庁 家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック
アッと思って、とっさに私は食器棚を押さえ、お父さんがあっちから、テレビを押さえました。食器棚は、観音扉*を少し太めのゴムでとめていました。そのゴムが伸びて、中のものが少し飛び出しましたが、たいしたことはありませんでした。
引用:もし、一日前に戻れたら・・・『一日前プロジェクト』エピソード集
冷蔵庫
ベルト式器具で壁に固定する。冷蔵庫の背面上部にあるベルト用の穴を使い、壁に連結させるとより効果的。底面のキャスターによる移動を防ぐため、必ずロックする。

出典:東京消防庁 家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック
テレビ
床や壁に設置されたテレビ台とテレビを直接固定する。ストラップを使う場合は、テレビ本体の重量や形状に合わせて本数を増やし、連結・固定させる。
マット式の場合は、取付面の凹凸が大きいと粘着不可能なので注意する。
※キャスター付きテレビ台は移動防止対策も必要です。

出典:東京消防庁 家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック
家具転倒防止対策でよくあるQ&A

なるべく早めに対策しよう
大地震が発生すると、最悪の場合は家具で命を落とします。自分や家族の身を守るためには、正しい方法での転倒防止対策が必須です。
もしまだ対策していない方は、家具の効果的な設置方法や器具の種類を確かめ、できるだけ早く対策しましょう。