突然の停電や断水に襲われたとき、使えなくなると困るのがトイレです。
そもそも停電したらトイレは使えるのか、停電と断水が同時に発生したら水を流せなくなるのか、気になりますよね。
この記事では、停電や断水が起きたときのトイレの流し方や、流してはいけないケースについても詳しく解説します。
停電しても水を流せる?トイレの種類ごとに解説
トイレの種類や操作パネルの有無などにより、停電時でも水を流せるかどうかは異なります。
まず、ご家庭のトイレはどのタイプなのか確かめておきましょう。
タンク式
多くの一般家庭で設置されているのが、シンプル構造のタンク式です。
レバーを回して水を流すタイプは、電力不要なので停電時もそのまま使えます。
ただし断水が発生した場合は、水道からタンク内へ水が補充されません。
よってタンク内の水がなくなったら、バケツなどを使い手動で流す必要があります。
操作パネルで水を流すタイプは、停電すると水を流せません。
しかし、パネル式は非常用の手動レバーを搭載したモデルが多いため、取扱説明書やメーカーのホームページをご確認ください。
キャビネット付き
背面のキャビネットのふたを開けると中にタンクがあり、またトイレットペーパーや掃除用具なども収納できるタイプです。
キャビネット内のレバーを操作すれば、停電時でもタンク式のように水を流せます。
ただしタンク式と同様、断水した場合はタンク内へ水が補充されなくなるため、手動で流す必要があります。
また、こちらもパネル式は停電時に水を流せません。
非常用の手動レバーが搭載されているかどうか、取扱説明書やメーカーのホームページをご確認ください。
タンクレス式
タンクレス式はタンクを設置しない水道直結型で、電力により水圧を操作し流すタイプです。
電力で動くタンクレス式は一見、停電したら水を流せなくなりそうですよね。
しかし製品によっては、側面のカバー内にあるレバーや紐を操作することで、水を流せるタイプもあります。
タンクレス式は、メーカーによって停電・断水時の操作方法が異なります。
設置しているご家庭は、取扱説明書などを確認しておくといいでしょう。
\大容量&機能豊富なのにコンパクト/
断水時にトイレの水を流す方法
タンク式もタンクレス式も、基本的には断水時に水を流す方法は同じです。動画もあわせてご参照ください。
タンク式・タンクレス式共通
断水時はタンク内へ水が補充されないため、一定量の水を手動で便器内へ流す必要があります。
- 汚水の水ハネ防止のため、便器の周囲に新聞紙などを敷く。
- バケツ1杯(5~6リットル)の水を便器の中心へ勢いよく流す。(和式の場合はレバーを押しながら流す)
- 1回で流しきれない、もしくはにおいが気になるなどの場合は、さらに水を注ぎゆっくり流す。
- 便器内に3~4リットルの水を注ぎ、水位を通常の高さにする。
※2~3回に1回はバケツ2杯程度の水を流し、汚物停滞を防ぎましょう。
少量の水を流しても効果がないため、ペットボトルから直接水を注ぐ方法では不十分です。
トイレの水を手動で流すためには、意外と大量の水を使います。
断水時は生活用水の確保がままならない状態に陥るため、水の持ち運びがしやすく備蓄も可能な「ウォータータンク」があれば役立つでしょう。
タンクレス式|メーカー別の例
TOTO
【停電の場合】
便器右横にある手動の洗浄レバーを引いて流す。
【断水・手動レバーがない場合】
バケツを使って水を流し込む。
Panasonic
サイドカバーを外し、停電用ハンドルを時計回りに回し排水する。
流し終わったらハンドルを反時計回りに回し、便器洗浄面にバケツで水を入れてためる。
LIXIL
トップカバーを外し、手動レバーを反時計回りに180度回すと水が流れる。
手動レバーを外し真上方向へ引き上げ、水位が上がったあと手動レバーを離すと水が排出される。
トイレに水を流してはいけないケースも?停電・断水時の注意点
状況によっては、トイレに水を流すと周囲へ悪影響を及ぼします。
また、断水復旧後の注意点についても押さえておきましょう。
排水管が破損していたら水を流さない
地震などで排水管が破損している場合は、トイレに水を流さないでください。
もし水を流すと、下記のような事態に発展する恐れがあります。
注意ポイント
- 汚水が逆流してあふれる。
- 汚水が下の階などへ漏れる。
- 排水管が詰まり復旧作業に支障をきたす。
- 高額の修理費用がかかる。
タンクに水を入れて溜めるのはOK?
タンク式は停電時でもレバーを回せば水が流れるので、タンク内に水を溜めておきたくなりますよね。
しかし、タンクへ水を直接入れるのは控えるのが無難です。
タンクの周辺の電気部品に水がかかると、故障してのちのち余計な修理費用が発生するかもしれません。
本来トイレの稼働は、タンク内に溜めた分だけでは水量不足なので、流し切れず詰まってしまうことも考えられます。
断水した場合は復旧後に注意
停電だけでなく断水も発生した場合は、復旧後の「エアーハンマー現象」に注意する必要があります。
エアーハンマー現象への対策として「エアー抜き」が有効です。
給水管に備わっているエアー抜きバルブを操作するか、バルブがない場合はトイレを使う前に洗面所・キッチン等の水栓バルブをゆっくり開けてください。
簡易トイレも備えておくと安心
バケツに水を入れて運びトイレに流す作業は、思いのほか重労働です。
さらには、断水時の水はとても貴重なため、水無しで利用できる簡易トイレを備えておくと重宝します。
なお、緊急時で簡易トイレの備えがなかった場合は、ポリ袋・段ボール箱・新聞紙などを使った自作も可能です。
-
一人暮らしで地震が起きたらとても怖い!最低限の対策を伝授
停電・断水した場合の適切な対処手順
すでに停電・断水の被害に遭ってしまった方も、いつまた同じ状況になるか分かりません。
突然の災害時にもスムーズに対処できるよう、基本的な停電・断水の対処手順を押さえておきましょう。
停電した場合の対処手順
停電した場合、下記3パターンによって対処法が異なります。
- 自宅のみ停電(ブレーカーが落ちている)
- 自宅のみ停電(ブレーカーが落ちていない)
- 自宅も近所も停電
①自宅のみ停電:ブレーカーが落ちている場合
自宅だけが停電している場合、まずはブレーカーの状態を見てください。
たくさんのスイッチがありますが、下記ブレーカーのいずれかが落ちているかもしれません。
ブレーカーの種類
- アンペアブレーカー:家全体の電気を管理。分電盤にない場合はスマートメーターが設置されている。
- 安全ブレーカー:回路ごとの電気を管理。小さなタイプが複数設置されている。
- 漏電ブレーカー:家のどこかで漏電が起きると落ちる。放置すると感電や火災の危険も。
対処法
アンペアブレーカー | ①使っていた電源機器のスイッチを一度切る ②アンペアブレーカーを「入」の状態にして、電源をひとつずつ入れる。 |
安全ブレーカー | ①対象の部屋へ行き電気機器のスイッチを切る。 ②安全ブレーカーを「入」にする。 |
漏電ブレーカー(※) | ①安全ブレーカーを全て「切」にする。 ②漏電ブレーカーを「入」にする。 ③安全ブレーカーをひとつずつ「入」にする。 ④途中で漏電ブレーカーが落ちたら、その回路が漏電箇所である可能性が高い。 ⑤漏電と思われる回路の安全ブレーカーを「切」にする。 ⑥漏電ブレーカーを再度「入」にする。 ⑦漏電と思われる回路以外の安全ブレーカーを「入」にする。 |
(※)この手順で漏電箇所以外の電気を復旧できますが、そのまま放置するのは危険です。漏電調査や配線修理は「電気工事士」の資格が必要なので、必ず専門業者へ点検・修理を依頼してください。
②自宅のみ停電:ブレーカーが落ちていない場合
どのブレーカーも落ちていないのに自宅が停電している場合は、下記の原因が考えられます。
- 引込線(電柱と家屋をつなぐ配線)が切れている。
- 建物内の設備に不具合が生じている。
- ブレーカーが故障している。
- 近隣で電気工事や計画的な停電が行われている。
引込線や設備の不具合に関しては、電力会社で異常を検知できず停電情報として扱われません。
なお、ブレーカーは寿命が約10年なので、経年劣化により誤作動を起こす可能性があります。
もし停電の原因が分からなければ、地域ごとの一般送配電事業者(例:東京電力)へ連絡してください。
③自宅も近所も停電している場合
自宅も近所も停電したときは、自然災害や何らかの事故により、付近一帯の電力設備が故障していると想定されます。
この場合は電力会社が復旧作業を行いますが、全面復旧まで1週間以上を要することも。
なお、各地域の電力会社ホームページでは停電情報を掲載しています。
停電直後はまだ情報が載っていない可能性もあるので、20~30分ほど時間をおいて確認してください。
断水した場合の対処手順
断水が発生したら、まず自宅内の各所にある止水栓を閉めてください。
止水栓とは
トイレ・台所・浴室・洗濯機等の水量を調整する栓です。
それぞれの設備付近に設置されており、ハンドルタイプやマイナスドライバーで開閉するタイプなどがあります。
仮に水道管が損傷していてそのまま水道を使おうとすると、自宅や階下へ漏水する恐れがあります。
また、水道管内に水がなくなり空気が混入すると、断水復旧時に圧力で蛇口が飛び跳ねる危険も。
止水栓をあらかじめ閉めておくことで、このようなリスクを軽減できます。
もし止水栓の場所が分からなかった場合は、住宅全体の給水を管理する元栓を閉めます。
元栓の設置場所は建物によって異なるので注意してください。
元栓とは
地下の水道管から住宅への水の供給を調整する栓です。
閉めると住宅全体の給水が止まります。
元栓の設置場所一覧
マンション | 玄関近くの壁や箱の中(建物の規模によって異なる) |
アパート | 敷地内、共用スペース(廊下・駐輪場等)のメーターボックス内 |
※アパートの元栓は複数の世帯分が同じ場所に設置されています。
誤って別の世帯の水道を止めてしまわないよう、慎重にご確認ください。
断水だけでなく水漏れした場合もすぐ止められるよう、設置場所を確認しておくといいでしょう。
止水栓の設置場所は建物の年代や種類によってさまざまで、また元栓も普段は目に入らない場所へ設置されています。
なお、断水復旧後は元栓を全開にしましょう。中途半端に開いた状態だと、水流を止める部品が摩耗し止水できなくなる恐れがあります。
トイレのタイプや取扱方法を確認しておこう
水を流してはいけないケースはあるものの、基本的には停電時でもトイレは使えますし、断水しても流せます。
万が一の事態に備え、この機会にご家庭のトイレについてメーカーや取扱説明書などを一度確認しておきましょう。